買い付け地はイングランドでしたが、アイルランド・ダブリンの工房によって制作された教会窓です。
2018年の設置から5年半振りに再会した『聖オリバー・プランケット』は、この日も変わることなく柔らかい光を透過していました。
というのも、左右の壁面を測るため、お伺いしたのは2023年の秋でした。
採寸によって判ったのは、換気口のカバーまでが206cm、床から高さ20cmのところまでアルミモールが約8mm出ていること。
また、電源は既存のウォールランプから取り、幅は成り行きでOK、ただし奥行きは可能な限り薄くとのことでした。
それらの条件を踏まえ、図面を描きました。
そして2024年の夏、サザンプトン港から無事にコンテナが到着しました。
昼間、南向きの屋外で撮るとこんな感じです。
全体に絵付けが施されている点と周り(手前)も明るいこと、背景にある物やカメラを向ける角度によって実物より暗く写っていますが、元々キラキラ光るようには作られておらず重厚な印象を受けます。
現物が届いたので、もう少し具体的な図面を描きました。
同時に、アンティークワードローブなどに多い構造で、A~Cの3ピースに分けることにしました。
理由は、輸送や搬入を考慮し、もし現場で調整が発生した場合、修正がし易いように。
概ねの仕様が決まれば、出来ることから作業スタートです。
先ずは、ステンドグラス本体のメンテナンスと同時に、マホガニーで作られた木枠の剥離作業です。
なお、ステンドグラスの状態は良かったのですが、細かい割れ修理や、過去の修復で雑な部分や外れている箇所のやり直しが主でした。
木枠の剥離が完了したら、金物を付けて扉に加工します。
次に、扉に合わせた外枠を作って
その枠に合わせて作った上下段を組み立てると、無塗装の『どこでもドア(仮)』が完成しました。
さておきまして、ここからは実験です。
Q、中に照明を入れた場合、ステンドグラスはどう見える?
A、やってみないと判りません...
ということで、時間も、それに伴う費用も掛かりましたが、「納得するまでやってください」とのお言葉に甘え、いろいろ試させていただきました。(ありがとうございました)
↑ 上の写真は、実際の条件に合わせた簡易照明を作って、ステンドグラスを置いてみました。
木箱の外寸奥行きは10cmですが、背板や扉の厚みを引くと内寸は7cmしかありません。
光源との距離がとても近いため、光のドットが顕著に出ます。
そして、局所的にしか光りません。
↓ 下の写真は、その光の粒を消して、全体が均一に光るよう沢山の素材を試しました。
ガラス、アクリル、塩ビ、照明用拡散板など、幾つかのメーカーから様々な厚みや色味のものを用意して、最終的に2枚に絞りました。
メーカーさんも、いろいろと資料を送ってくださいました。
なるほど!!!今度、またゆっくり教えてください(笑)
結果、実際に目で見て一番良いと思えるものを主観で選びました。
光源の拡散材料が決まったので、届くまでの間に仕上げに取り掛かります。
一番手前に強化ガラスを入れて
塗装して
一式を組み上げて
点灯すれば完成です!
実は、今回の作業でヒントになったのは、V&Aのステンドグラス展示でした。
納品事例でも書きましたが、中に入る光源は左右2発ずつの計4発、いずれも調光/調色が出来るので、白からオレンジの範囲で良いところを採っていただきます。
また、1つのリモコンで4つすべての光源を調整できるのは、うれしい誤算でした。
もちろん、一番慎重に行った作業はステンドグラス本体のメンテナンスですので、時間はかかりましたが最初に思い浮かべたイメージ通りに仕上がったと思います♪