イギリスから送られてきた1枚の写真。
一瞬「ん?何だ??」となりましたが、1930年頃の建物から外された窓で「ガラスの材料取りにどうだい?」とのことでしたので買い付けてみました。
実際に届くと意外と大きく、それぞれが縦横90cmぐらいある上下スライドの窓でした。
木枠は部分的に朽ちていて、数枚のガラスが割れていました。
隙間に入る埃などから最近の割れではなく、また突発的な衝撃というよりは木枠に引っ張られてゆっくり割れた感じです。
早速、硬化パテを割って、ガラスを取り外すことにしました。
この作業はガラスの真横をノミと金槌で叩くため、ガラスを割らないよう慎重に作業します。
特にパテの中でガラスを押さえている釘(赤丸部分)を叩くと、そこを起点にガラスが割れますので気をつかいます。
実際、パテを割ってみないと外からは見えない釘ですが、古い窓ほど鉄釘の赤錆びが表面に浮いていたりするので、釘の位置を見つけやすい場合もあります。
でも、最終的には運です!(笑)
この透明ガラス(キャセドラル)を押さえていたパテは他の部分と異なり、過去のどこかのタイミングで入れ替えられたもの。
ちなみに、キャセドラル自体は現在も作られていますが、今のものとも明らかにテクスチャの雰囲気が異なるためそれなりに古いものだと思われます。
ただ、厚みが4mmありましたので、古くても数十年ぐらいと推測されます。
よって、下の写真の小さな花模様がエッチングで描かれたガラスがオリジナルでした。
こちらもA,B,Cの割れが入っていました。
Aは割れ切っていますが、BとCはクラックですので衝撃を与えると割れは止まることなく、どこかへ向かって進む状態です。
オリジナルのガラスは出来るだけ大きく残したいので、赤線の部分でカットして割れを縁切りします。
日本では大正ガラスと呼ばれたりする、製法上真っ直ぐな板を作ることができなかった時代のガラス。
表面が緩やかに歪むところに趣を感じますね。
などと考えていると、ただ材料にするのが勿体なく思えてきたので、ステンドグラスとして組み直すことにしました。
もちろん、残ったガラスは古いステンドグラスの修理に(いつか)使います。
余談ですが、下の写真の手に持っている赤いガラスは、今回の四隅に入っているパーツと同じデザインのもの。
以前、もう少し新しい年代の別の建具から外して記録用に保管しています。
もちろん違う職人さんが作ったものだと思いますので、磨き方や柄の比率は異なりますが、イギリスの知り合いの年代を感じるご自宅のドアにもまだ同じ物が入っていますし、街を歩いているとたまに目にしますのでたくさん作られていたのかもしれませんね。
ということで、その知り合いのお宅の写真を参考に、一般的なドアに合うサイズで作りましたので近々店頭に並べようと思います。
(品番:1109100054216)