この度お納めした、ロンデルが並ぶカラフルなステンドグラス。
元は頑丈な木枠に入っていて、イギリスの建物に取り付けられていました。
下の写真は現地で撮られたものになりますが、白いペンキで30と書かれていますので、イングランドのどこかの街の30番地からやって来たんでしょうね。
ディーラーさんから送っていただいた写真は光を透過していませんが、この年代に多用されたガラスや後ろの物の透け具合で概ね色味や雰囲気の想像がつきますので買い付けました。
長い航海を終えて工房に到着すると先ずは軽くクリーニングをして、店頭でホームページ用の写真をパシャリ。
ステンドグラスを挟み、手前が少し暗めの位置で撮影するとケイム(金属沿線)が影の黒い線として写るので柄がはっきりします。
今回は木枠を作り替えるため、再度工房へ運んでメンテナンス開始です。
下の写真は木枠から外して、夜間に蛍光灯の下で撮りました。
目線の角度にもよりますが、床の色でガラスの見え方も変わりますね。
作業台の上に寝かせて置くと、ボーダーに使われている赤いガラスは黒っぽく見えます。
以前にも書いたかもしれませんが、赤いガラスは波長の関係で透過する光の強さに比例して人の目には鮮やかに見えますので、光を透過しないとこのような見え方になります。
でも、ステンドグラスを透過光で見ないことによって気付くこともあります。
それは、ケイムの表面に付いた黄色っぽい苔のようなもの。
表面の汚れを取ったら出てきたのですが、本来影の黒い線でしかないケイムに金彩が施されていたのが判りました。
屋外側のケイム全体に金泥(金を膠で溶いたもの)が塗られていたようですが、長い年月を経て少しずつ剥離したと考えられます。
そんな中、木枠に入っていた部分は風雨に曝されていなかったためか綺麗に残っていました。
実際のところ、教会に入っていたステンドグラスなどでたまに目にすることがありましたので、宗教的装飾の意味合いが強いのかと思っていましたが、外から見えない部分(しかもパテに埋まる一番太い四周枠)にも塗られていたことを考えると、ケイムの酸化を防ぐためのコーティングの意味もあったのかも知れませんね。
もちろん、装飾という点ではケイムを何色で塗っても良いと思います。
そんなこんなで、先述の金彩部分はまたもや木枠に隠れてしまいました(笑)
実はこのコをお送りしたのは、先日京都にも大雪が降った日でした。
遠方への発送でしたので少し心配しましたが、翌日には無事到着し、こうやって実際に飾ってくださったお写真を拝見すると本当に感慨深いです。
ありがとうございました!