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#076『絵付けの修理』

2020-10-23

本日商品ページでご紹介した、19世紀後期のフランス製ステンドグラス窓。
アイビー、朝顔、ガマの穂、菖蒲、カラーなどが繁る中、ツバメやトンボ、蝶が舞い、カワセミや蛙が憩う風景が描かれています。

一般的に想像するケイム(金属沿線)で輪郭が描かれ、色ガラスを使い分けて模様が表現されているモノとは異なり、単色のガラスを格子に組んだだけのシンプルなパネルに絵付けが施された絵画的要素の強いステンドグラスです。

敢えて自国には生息しない動物や植物を描き、その窓越しに屋敷の庭を見るというのが貴族の間で流行った時代もあるようですので、光を透過するキャンバスという扱いだったんでしょうね。
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ちなみに前回の買い付けにてイギリスのオークションで競り落としたモノですが、向かって右のパネルの最下段右端が抜け落ちていました。
もちろん出品時からこの状態で、それを承知で買付けています。

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そして今年5月、ロックダウン中だったイギリスからのコンテナに載せられて無事に到着しました。
当たり前ですが、何度見てもやはりそのままでした(笑)

ということで、作ることにします。
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先ずは時間を掛けて観察します。

最初は表面のテクスチャが近い仏国サンゴバン社のキャセドラル(写真のもの)を使おうと考えていましたが、実際に並べるとオリジナルのガラスには薄い琥珀色がついているのが分かります。

実はこのキャセドラル、現在ではクリア(透明)を残し色ガラスは全て廃番になっています。
工房にストックしている一番薄い琥珀色を合わせましたが、比べると断然濃くて使えませんでしたので、今回は色味を合わせた米国のガラスを使うことにしました。
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ガラスが決まれば、次は絵付け顔料を決めます。
(混ぜ方や焼成温度など、オリジナルのレシピを書いているので写真の一部を加工しています m(_ _)m )

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使う材料が決まれば、あとは作業あるのみ。

本当ならスケッチなどを描いたほうが良いと思いますが、今回は残る部分も多くヒントがたくさん得られましたので下書きなしで描き進めます。

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輪郭が描けたら窯で焼き、次は影を描いて焼きます。

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光を透過した時とさせない時を見比べながら、影を描き足し再度焼成します。

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出来るだけオリジナルのタッチに合わせて描き、見た目も概ね違和感がなければ、次は裏からシルバーステインを塗って焼きます。

このシルバーステイン(硝酸銀)は他の顔料と異なり、その名の通りガラスの中に染み込むように色が入ります。
色味としてはイエローからオレンジまで幾つか種類がありますが、焼成温度や使うガラスで発色が異なりますので、実際は焼いてみるまでわからない部分もあります。
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焼き上がるとこんな感じです。
白黒だった絵に、一色入りました。
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最後に表面の艶感を合わせて組み込むと完成です。

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ガラスなので仕方ないですが、それにしてもなぜ絵が描かれているところが割れるんでしょうね?(笑)

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