今回のブログは、先ずこちらの写真から。
以前の買い付けの際、たまたま入り口が開いていたのでフラッと立ち寄った教会のステンドグラスたち。
識字率の低かった時代に、聖書を読むのではなく絵と言葉で説明するための教科書として素晴らしい窓が作られました。
当時は分業も成り立っていて、デザインする人、絵を描く人、ガラスを吹く人、切って組む人など、それぞれの分野のクラフトマンたちが大勢で作り上げた大作です。
これらのことを書き出すと終わらなくなるのでまたどこかの機会にするとして、暗い教会の中でひと際輝きを放つステンドグラスは本当に綺麗ですよね。
そして、こちらの写真は現在メンテナンスしている天使が描かれた19世紀のステンドグラス。
7年前の買い付けでイギリスの修復工房から譲っていただいたのですが、決して状態の良いものではありませんでした。
ヨーロッパの古い教会に訪れたことがある方はご存知かもしれませんが、建物に入るステンドグラスを近くから見ると意外と多くの割れがあったり、永い年月の間に幾度か修理された跡も見ることができます。
「いつの時代もどこの国にも『悪ガキ』という愛すべき子どもたちがいて、彼らは特に顔を狙って石を投げるから困る」と仰っていたのは印象的でした。
上の写真は、濃い色のガラスにグリザイユで厚い絵付けが施されたピースの裏側です。
殆ど光を透過しないため一見わからないのですが、クラック(割れ)が入っています。
普段は行わない作業ですが、割れ方を探るためピンピンに砥いだ彫刻刀の先を引っ掛けて、少し角度をつけて動かすと小さなチップが白い線として表れます。
ちなみに、このピースにはもう1本クラックが走っています。
今回は新しい絵付けピースを制作するのではなく、オリジナルのガラスを残すためケイム(金属沿線)補修を行います。
作業の完了はもうしばらく先になりますが、メンテナンスが終わり次第店頭に並べたいと思います。
自然光を透過した優しい表情の天使を、是非ご覧になりにお越しくださいませ。