アンティーク家具のメンテナンスに於いて、脇役的存在ですが無くてはならないのが『鍵(Key)』です。
多くの家具の扉や引き出しには鍵穴があり、あたり前ですが鍵をさして回すことでロックが開きます。
ただ、鍵穴のみで取っ手やつまみが付いていないデザインの家具も多く、挿し込まれた鍵自体がその役目を果たしますので『鍵=取っ手』という役割もあります。
買付け時、鍵が無くロックが掛かったままの扉やキーボックスが外され取っ手に付け替えられている家具もあり、それらを元に戻すための材料として古い鍵たちをストックしているのですが、大小様々あり鍵自体を収集したくなるものばかりです。
当時の鍵の仕組みとしては、キーボックスの中に形状が異なる数枚の羽根が同軸上に並んでいます。(いわゆるシリンダーです)
水平方向から挿し込んだ鍵を180度回すと、鍵山の高さに合わせてその羽根が持ち上げられ、丁度引っ掛かる部分のない一直線の隙間が生まれます。
そして、そのまま鍵を回し続けると、鍵山の一番高いところがその隙間を通す様にデッドボルト(キーボックスから出入りするパーツ)をスライドさせ施錠/開錠となります。
文字での説明に限界を感じています(笑)
さておきまして、下の写真のように色々なサイズの鍵があるのですが、それにも理由があります。
鍵山の形状はもちろん異なりますが、その長さや太さ(内径と外寸も重要)、縦溝と横溝、そして厚みなど。
その条件に一番合う1本を選んでから、鍵自体を加工するかキーボックスの中を触るかを判断します。
そして、今回ご依頼頂いたのは、ある歴史的建築物の屋内ドアに鍵(新しくないモノ)を付けたいとのこと。
幸いなことに、「いつか必要になるかも知れない」と数年前の買付けの際に買っていたロック付きラッチと鍵のセットがあり、先述の鍵たちほど古くはありませんが使うことになりました。
ただ、2箇所のドアに付けたいとのことでお探しすると、これまた幸いなことに似た形のモノが1つ見つかりました。
でも、鍵はありませんでした。
そこでBoxを開けてみると、パーツは異なれど仕組みは殆ど同じでした。
そして、またまた幸いなことにボックス内を少し加工して、鍵を少し曲げると両方に使える共通キーになりました。
要は2箇所のドアを1本の鍵で施錠/開錠でき、もう1本はスペアキーとしてお持ち頂きます。
後日お取り付けに伺うのですが、最後に「またもや幸いなことに、既存のドアノブを組み込むことが出来ました。」と言いたいと思います。