以前お客様に尋ねられたことがあるのですが、「修理と修復の違いって何?」について書いてみようと思います。
クレアアンティークスでは『修理』と『修復』をまとめて『メンテナンス』と呼んでいますが、強いて言うなら両者共に元の状態に戻すことを前提として形の残っているものを触るのが修理、無くなったものを作るのが修復、そして新たにモノを生み出すことを制作と考えています。
例えば、ぐらぐらになった椅子があったとして、一度ばらばらにして組み直すのは修理。
その椅子の彫刻が無くなっていて、ある程度年代を合わせた同じ素材で彫るのは修復。
ご依頼に基づき、新たにキャスターを付けたりするのは制作となります。
ただ、博物館の収蔵品などの中には何かを付け足すことはせず、割れたところは割れたまま、無い部分は無い状態でそれが辿ってきた今の姿を維持する修復もありましたので、全てがこれにあてはまるわけではありません。
そして一つのモノを触る中でもそれらの作業が混在しますので、実際のところ呼び方はどちらでも良いと思っていて、それぞれのモノに合った『メンテナンス』をすることを心掛けています。
下の写真は、前回の買付けで出会ったビスケットを入れる器です。
磨くために一度ばらばらにすると中でボルトが折れていたり、取っ手を倒すと蓋が開く仕組みなのですがその引っ掛かる爪が無くなっていたり、脚を固定するギボシが一個無かったりと触り出すと色々と出てきます。
銀鍍金が施された部分と錫で作られたパーツがあり、特に開閉時に負荷が掛かる蓋の左右に飛び出た涙型の爪は錫のため元々少し弱い作りではありました。
幸いオリジナルの部分が1本残っていましたので形はそれを模して錫で作成して、外から見えないように中には直径1mmの心棒を仕込みました。