現在、工房で張替えを行っている1900年頃のエドワーディアン様式の椅子。
近々店頭に並べたいと思い、気合を入れてメンテナンスしています。
日々のメンテナンスではよく目にする、生地の下から出てくるオリジナルの生地。
中には3枚以上重なっているものもあり、持ち主が変わる度に張替えられたのか、模様替えに際して張り替えたのか、色々と想像を膨らませます。
実際、新しく張り替える上で生地選びの参考にもなり、椅子生地を剥がす作業は楽しい仕事の一つでもあります。
今回書こうと思うのはその生地ではなく、それを留めているタックス。
タックスとは、鉄で作られた釘です。
油絵などを描く方へは、キャンバス釘と言った方が分かりやすいかも知れません。
要領としてはキャンバスを木枠に張る作業とあまり変わらず、形を整え均一に張った生地を固定します。
クレアアンティークスでは、張り替える際コンプレッサータッカーを用いますが、入り組んだ部分や細かい作業を要する場合はこのタックスを使用します。
剥がした直ぐの釘は錆びていたり、生地の繊維や麻ベルト、接着剤の膠(ニカワ)が付いています。
今までは一つひとつ手で取り除いていましたが、あまりにも時間が掛かるので最近はバーナーで焼きます。
焼く前におまじないの薬品を掛けることで、表面の錆びも綺麗になることが分かりました。
赤くなるまで焼くと、折れかけている釘や「す」の入った釘はこの時点ではぜるように折れますので、同時に選別も出来て一石二鳥です。
最後に急冷することで、釘自体に焼きが入るためか、実際に打つ時に曲がり難いように感じます。
もしかすると、もっと効率よく短時間で綺麗にする方法があるかも知れませんので、何か良いアイデアが見つかればまた書こうと思います。